SaaS製品の提供価値は売上拡大と原価削減のどちらに軸足を置くべきか

toB向けのSaaS製品には業務効率化など原価削減に効くものと売上拡大に効くもの、またその両方を満たすものがある。

製品のプロポジションとしていずれかに軸足を置きながらも、最終的に両方を満たすプロダクトが市場でのシェアを築いているように見える。その中でも確固たるシェアを築いている製品は便益の重心を売上拡大に置いている印象である。

名刺管理アプリSansanでは、名刺管理する日常業務の効率化という視点からは原価の改善にあたる便益が見えるが、営業過程で生まれた無形資産の組織的活用という視点では売上拡大に資する便益が見える。

現場的な興味を惹きやすいのは業務効率化(原価削減)であるが、経営判断を得やすいのは売上拡大に効く製品と考えている。

売上拡大の便益が経営判断において優先される傾向は、新規製品は新興企業からの興味を得やすく(トラディショナルな企業に比べると導入ハードルが低いため)、新興企業が追いかける指標は売上高の場合が多いことためだろう。

業務効率化など原価削減のアプローチはあくまで売上拡大の手段として置かれるべきであり、この主従関係が逆転すると決裁を得づらい製品になる恐れがある。

新しいtoB向けの製品を市場に投入する際は、売上拡大に資する便益を提供できるかをよく吟味した上で、原価削減の切り口をマーケティング的に取り入れるのが良いのではなかろうか。