コンマリの流行にみるレンガ職人の面影

今から少し前にアメリカで爆発的な人気を博した片付け上手な日本人女性がいた。

片付けで有名になり一部の熱烈なファンからはグル(師)と仰がれるコンマリ。彼女のプロデュースをする川原氏は彼女自身のパートナーでもある。

彼を取り上げたインタビュー(※1)からは流行をつくる因子が感じ取れて非常に示唆深い。

例えばTV番組の協業先選定にまつわるエピソード。青木氏曰く、アメリカでの番組制作パートナーの決め手は「コンマリメソッド」への深い理解を担当プロデューサー(のゲイル)から感じたことだという。

ゲイルはコンマリの片付けを資本主義の文脈に置いて以下のように評した。

コンマリの片付けは人類を次に進めるメソッドだ。
現代人の生きる資本主義社会はモノに溢れ、豊かさに溺れ、その結果多くのひとの家は散らかってしまった。もはやいたずらにモノを増やしても、人は幸せに生きられないと気付き始めている。
モノを増やすことではなく手放すことで幸せに近づくコンマリの片付けは、人類の新しい成長の仕方だ。
Inside Vision #24 より筆者要約
参照資料18分頃


このように「片付け」などの身近な行動も、独自の文脈に置き直すと新鮮さが感じられる。

有名な逸話で、レンガ積んでいる人に何してるかを尋ねたら「教会づくりさ。平和の礎を築いている」という回答に感心する話があるが、今回のエピソードはこれと同じ構造を持っている。

壮大な文脈(例えば社会問題のようなもの)に身近なモノで鋭利に切り込むと、その意外性は人の興味感心を強く刺激する。

抽象化するとシンプルで当たり前に思えるが、そういうものほど定石として役に立つ。コンマリの流行も多分に漏れず(意識的にではないにしろ)これを満たしていた。

流行を再現性持って仕掛けられる人には、このような定石が数多く頭に蓄積されているのだろう。

※1:‎起業家とクリエイターの頭の中に迫る "Inside Vision":Apple Podcast内の日本からレッドカーペットへ。世界を熱狂させた仕掛け人が見る景色。前編| 川原卓巳(KonMari Media Inc. CEO) | Inside Vision #23