経営者視点を持つ社員

トーキョーハーバー氏は経営者の仕事を「現場に起こさない変化を起こすこと」と整理している。
経営者の仕事|トーキョーハーバー|note

本稿では「経営者視点を持つ社員」について考える。結論を先に述べると、経営者視点は持つでは不十分であり、影響力と実行力もあわせて身につける必要がある。

現場で優秀とされる社員は、現場の決裁権のない対象(例えば一定以上の経営資源や抜本的な価格政策など)と、決裁権のある対象を切り分けて考える。そして前者を定数、後者を変数と捉えた上で、評価指標に最も大きな影響を与える変数にリソースをあてられる人物だろう。

一方で経営視点をもつ社員は、現場の決裁権のない対象(例えば一定以上の経営資源や抜本的な価格政策など)を定数と考えない。現場の決裁権のない対象を定数と考えず、動かしうる変数と考えてあるべき姿を描くことができる人物だろう。

ただし、現場の決裁権のない対象のあるべき姿を思考・発言はできるが、それらに対して影響力や実行力を発揮できない社員は「評論家・批評家」などとしばしば揶揄される。(そしてこの状況はコンサル出身者や現場に長くいる社員によく起こる)

「評論家・批評家」は現場の優秀な社員と比べて、定数の在り方の検討に自分のリソースを充てがちであり、相対的に評価指標に転換しやすい変数に充てるリソースが減少する。その状態であるべき論を語ると「余計なことを考えていないでもっと成果を出せ」と言われるわけである。

経営者視点を持ちつつ「評論家」と評されないためには、現場の決裁権のない対象のあるべきを考えるだけでなく、それらに対して影響力と実行力を発揮することが必要だ。

現場に立ちながら企業価値向上のために、本来現場では動かせない定数のあるべきを描けて、具体的な提案とともに経営層に意思決定を迫ることができる人こそが、経営者の求める「経営者視点を持つ社員」だろう。

「経営者視点を持つ社員」には、文字通り視点を持つだけでは不十分であり、影響力と実行力もあわせて身につけることが重要である。